脳脊髄液減少症患者・家族支援協会
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当会および識者からの提言

内容 2015.3.1現在更新準備中

識者からの提言コラム 

コラム(当会役員)

ガイドラインを患者寄りのものにするための提言

脳脊髄液減少症と水分補給の必要性

 

公的研究班ガイドライン作成にあたり最新情報や提言

 
脳脊髄液減少症最新情報
2010パート1
脳脊髄液減少症最新情報
2010パート2
 
2009脳脊髄液減少症
最新情報
2009脳脊髄液減少症最新情報
パート2
2009脳脊髄液減少症最新情報
パート3

 


厚生労働省脳脊髄液減少症研究班公式HP

 



編著脳脊髄液減少症研究会ガイドライン
作成委員会 (株)メディカルレビュー社
公立学校共済組合 関東中央病院 脳神経外科 
吉本智信 著 (株)自動車保険ジャーナル
神経外傷学会  「頭部外傷に伴う低髄液圧症候群」の診断基準などについて PDF書類で閲覧するPDF

現在、「脳脊髄液減少症」のガイドラインとして、上記のものが発表されています。
(当協会が把握しているものです。)

上記の3つのうち、私ども協会が支持していくもの、そして、その理由を「新提言」として発表していきます。
これまで協会は、5年間で、のべ30,000人以上の患者さんの生の声を聞いてまいりました。
その声を基準としてまいります。
あくまでも患者さんの立場で、NPO法人脳脊髄液減少症患者・家族支援協会
 (旧名 NPO法人 鞭打ち症患者支援協会)から「新提言」のホームページ発表を行いたいと考えております。

最後に、この提言が、
厚生労働省の脳脊髄液減少症研究班(主任研究者:山形大学医学部 嘉山孝正部長)よる「脳脊髄液減少症」の本格的な研究の、
少しでもお役に立てれば幸いです。



「はじめに」
厚生労働省の脳脊髄液減少症研究班(主任研究者:山形大学医学部 嘉山部長)が脳脊髄液減少症ガイドラインの策定も含め、本年9月以降に本格的な研究を
開始することとなりました。 この研究班は、脳神経外科学会、整形外科学会、神経内科学会、頭痛学会、放射線科学会など異なる分野の学会の専門家が参加し、
国内の13の医療施設で約200症例を集め、その症例を基に2年以内に診断基準を確立するのを主目的として結成されました。
NPO法人脳脊髄液減少症患者・家族支援協会は、この本格的な研究が開始されることを契機に、脳脊髄液減少症と診断されブラッドパッチ治療及び硬膜外生理
食塩水注入等で改善をした患者側の立場から、また、当協会が発足以来、行ってきた3万件にも及ぶ患者相談より得た経験に基づいて、ここに脳脊髄液減少症についての見解を述べさせていただきます。
また、他の関連分野に対しての提言等も付け加えておきます。
なお、文責は全て当協会にあることを明言しておきます。


「当協会の脳脊髄液減少症についての考え」
結論から申しますと、当協会は「脳脊髄液減少症」という名称の病態の存在を認めます。 と共に、「脳脊髄液減少症」は特発性低髄液圧症候群の概念の範疇を大幅に越えるもので、その病態は既存の特発性低髄液圧症候群の固定的な一定の枠の中で把握できるものではありません。 また、症状は、多種多様な形となって全身に及ぶものであり、「脳脊髄液減少症」は特発性低髄液圧症候群より派生したものというより、むしろ特発性低髄液圧症候群も含む高次元の新たな病態と考えるものであるとの見解に至っています。
また、ガイドラインについては、脳脊髄液減少症研究会ガイドライン作成委員会が出した「脳脊髄液減少症ガイドライン2007」を「脳脊髄液減少症」の診療に、最先端の医学的見解を指し示すものと認識しています。
更には特発性低髄液圧症候群の既成概念の枠にとらわれず、患者さんの全身を診てその根本的原因を探り当てるという、つまり、医療の根本義である患者さんの苦痛を取り除くことに第一義をおく、まさに、画期的なガイドラインであると考えます。

「日本における脳脊髄液減少症の各ガイドライン」
 現在、「脳脊髄液減少症」のガイドラインを正式に発表しているのは、神経外傷学会の「頭部外傷に伴う低髄液圧症候群作業部会」が策定したガイドライン、そして国際医療福祉大学熱海病院 篠永教授を中心とする「脳脊髄液減少症研究会のガイドライン作成委員会」が発表した「脳脊髄液減少症ガイドライン2007」(メディカルレビュー社発刊)です。そして、個人的な見解を発表されたものとして、関東中央病院
 脳神経外科部長 吉本智信氏が執筆された「低髄液圧症候群」(自動車保険ジャーナル社発刊)を入れると、3種類の「ガイドライン」があるものと我々は認識しております。
なお、吉本智信氏が執筆された「低髄液圧症候群」は、司法の場で現在、参照文献として多用されています。

「脳脊髄液減少症研究会ガイドライン作成委員会が出した「脳脊髄液減少症ガイドライン2007」を支持する理由」
まず、我々は、「脳脊髄液減少症ガイドライン 2007」を支持します。我々が「脳脊髄液減少症ガイドライ
ン2007」を支持する最大の理由は、篠永教授を中心とした脳脊髄液減少症研究Gの主要メンバーは圧倒的に臨床数が多いことです。シンプルな理由ですが、実はこのシンプルな理由が最も重要と捕らえております。逆説的に言えば、臨床を多数経験しないと「脳脊髄液減少症」の病態の全体像や本質をとらえることは困難であるという事実です。上記の吉本医師と懇談させていただいた折、「脳脊髄液減少症」(外傷性低髄液圧症候群)の治療経験は殆ど無いと申されていましたし(2007年5月9日時点)、昨年10月の日本脳神経外科学界総会において発表されました、神経外傷学会所属の島克司脳神経外科医(防衛医科大学校)も8例と、他の発表者と比べ格段と少ない症例数でありました。
 内容が少し外れますが、当協会が発行する会報誌の中で「症例数100例を越えて」という本疾病を診療さ
れている医師の特集コーナーがあります。最も評判が高いコーナーであり100例以上治療を経験する中で、「脳脊髄液減少症」は既存の特発性低髄液圧症候群(低髄液圧症候群)の概念には見られない多種多様な病態を覚知した経緯などを原稿にしたためていただいております。このような現実から、医学でも、他のあらゆる分野においても共通する認識として、過去の文献や机上の理論よりも、目の前の否定できない現象・事実を最も重要視しなければ未知の世界の開拓や解明はできないのは鉄則であると考えます。
 上記にあげた理由以外に、特発性低髄液圧症候群と診断された場合は、ブラッドパッチ(以下BP)治療や点滴の治療で、対患者数比でも、個々人の症状の改善度でも100%に近い効果をみせるという報告が多いのに対し、外傷性低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)と診断された患者さんのBP治療等の改善効果は、対患者数比で70%前後であります。先般、協会内部でも実態調査をしましたが、結果は、対患者数比においては、やはり70%前後でありますし、個々人の症状の平均改善度においては約50%という結果であります。
この30%や50%の差異があること自体、特発性低髄液圧症候群の概念を大幅に越えた新たな病態が存在することを如実に証明しています。
余談ではありますが、専門家でない我々からの素朴な疑問として、「特発性低髄液圧症候群でも脳脊髄液減少症でも、その原発は脊椎神経根近傍からの髄液漏がほとんどであるにも関わらず病態に差が生じるであろうか」というのがありました。その疑問に答えてくれたのが、「脳脊髄液減少症ガイドライン2007」です。この本の34ページ【4.特発性低髄液圧症候群と外傷性低髄液圧症候群】に明確に説明してあります。シンプルにして的確であると共感せざるをえません。


「上記項目の提言に至った経緯」
 この事を説明するには篠永教授と私(中井)との出会いまで遡らなければなりません。
私が様々な不定愁訴で苦しんでいた1997年10月、あることがきっかけで「むち打ち症患者応援ページ」を
立ち上げてから、毎日のように多くのアクセスがあるようになりました。
 この当時の私は、国際頭痛分類学会が定める(低髄液圧症候群)では該当しない症状で苦しんでいました。
「だるさ、電磁波過敏症、静電気の過剰留意、心臓の痛み、肩のはり、視力の低下、体温の低下、アレルギーの多発、歩行困難、思考力、記憶力低下、その他多数の症状」です。しかし、診断の基本となる頭痛がないのです。頚椎ヘルニアの手術を機縁として篠永教授と知り合った私は、インターネット上での知人、いわゆる「難治性のむち打ち症」の患者さんを篠永教授に紹介する流れが自然とできました。モクリー教授の特発性低髄液圧症候群の画像診断方法が確立された2000年以降、世界中で低髄液圧症候群の論文が出るようになりました。その多くの論文の中に記載されている症状が、むち打ち症の後遺症で悩む方々の症状と類似していたのであります。また、髄液漏が始まる原因として「軽微な外傷、くしゃみ、しりもち、性行為」等々があげられていて、効果的な治療方法としてはBP療法が効果的だと、いずれの論文にも示してありました。この軽微な外傷という記載に注目したのが、篠永教授だったのです。当然、篠永医師はモクリー教授の論文を元に、MRI検査やRI検査を開始されます。ここから、既存の論文では記述が無かった新しい事実の発見が次々と始まるのです。読みやすいように時系列的に箇条書きします。

(1) RI画像の漏れは明瞭に出るが、漏れは頚椎部で多いとされていたにもかかわらず、腰椎部に漏出画 像が多かった事実。
(2) 多量の髄液漏出画像がでているにもかかわらず、髄液圧が正常値を示す場合がほとんどであった事実。
(3) 頭痛が全くないのに、RI検査を実施した結果は、多数の場所から髄液の漏出が確認された事実(これは 、私の体験です) 
(4) RI検査では漏れが確認できなかったがBP治療を実施した結果、症状が劇的に改善した患者さんもいる事実。(この方は「どうしてもBP治療をしてほしい」との懇願があったので先生は困惑されながらもBP
治療に踏み切られた患者さんです)
(5) RI検査、脊椎MRミエロ検査で髄液漏出が確認できず、脳MRI画像でもほとんど正常な所見であったにも関わらず、硬膜外生理食塩水注入により、即時に症状の劇的改善がみられ、その効果が永続的に消失しない患者が多く存在する事実。
こういった症例を経験する毎に篠永教授は、髄液漏れは交通事故後もしくは外傷によっても日常的に発生し、患者さんも想像以上に多数いるであろうと推測をします。モクリー教授の名言である「神は細部に宿る」を実感されたものと思います。
なお、このような新たな事実の発見による改善例に対し、一部の医師には「プラセボ効果」、つまり「精神的
な効果であろう」と言われる方もおられます。しかし、100例以上の治療を経験されている医師は「プラセボ
効果」では説明ができ得ない、こういった例を多数経験されているのです。脳脊髄液減少症の患者さん全体の3割以上になるかもしれません。我々の行っている電話相談の中で、幾つもの治療法を遍歴され医療不信に陥っていた患者さん、また、精神的治療を行っても全く改善されなかった患者さんが、脳脊髄液減少症という新たな事実の発見により、BP療法等で改善したという、多くの生の声を聞いており、「プラセボ効果」だけでは説明がつかないことを実感しています。

「厚生労働省の脳脊髄液減少症研究班への期待」
私どもは嘉山研究班には大いなる期待と希望を持っております。それは、画像診断のみにとらわれない、そして、患者の悲痛な訴えに答えられる病態の解明も期待しているのであります。「その細部」を発見すべく挑戦をしていただきたく思います。アメリカの低髄液圧症候群の第一人者モクリー教授、そして日本の100例以上治療実績がある医師がこぞって「細部」を経験しております。ここに科学的なメスをいれ挑戦して行けば世界的な発見となり、他の原因不明の慢性的疾患の1部も原因が特定・解明されて行くことになるであろうと推測され、とてつもない多くの患者さんが救われることになると確信しています。2年計画ではなく国家プロジェクトとして予算を更につけ長期となるとしても、集中研究を懇願するものであります。なぜなら、真実の病態発見を見過ごしてしまう可能性が高いからであります。そして、研究過程において発見されるであろう「その細部」の事実を、医療から医学へと昇華していただきたく懇願すると、共に絶大なる期待を寄せるものであります。

「厚生労働省 国土交通省への要望」
 研究班が2年をかけてガイドラインを作成している最中でも、高額な医療費を支払い、治療を受けなけれ
ばならない患者さんが多数おられます。国の研究項目とした以上、研究をおこなう指定病院については治療費の免除を適用するべきであります。つまり、指定病院における協力患者さんの医療費は研究費の中に含まれるものと思いますし、一般的には協力患者さんの医療費は研究事業費の中でまかなうか、別途計上されるのが
普通と考えます。少なくとも全額自費ということはあり得ないと思います。
但し限度額は決められると思います。さらに研究の途中でBP治療等の効果があるとの経過報告が上がってくれば、来年度から、過去治療実績が多い病院については指定病院としての認定制度を設け、治療検査費は研究のためとし免除を行うよう要望します。
また、国土交通省にあっては国の方針で2年に及ぶ研究が開始されるわけでありますので、厚生労働省の脳脊髄液減少症研究班から一定の途中経過報告で髄液漏れが外傷などにより発生するコンセンサスがでれば至急、関係識者を収集し、自賠責の後遺症等級の設定審議をすることを要望します。時期として、明年2008年9月頃が望ましいと考えます。

「最後に」
21世紀は早くから「生命の世紀」となるであろうと、世界の認識の考察は一致していました。しかし、21世
紀に入ってからも一人の生命の価値は軽視されつづけているのが現状です。生命軽視の傾向性は日々の出来事で確認できます。この時(ピンチの時)こそがチャンスなのです。生命尊厳を根底に考える時代へと方向転換ができるはずです。民衆の生命を第一基準にするには、民衆が叫ばなければならないと思います。
この疾病の患者さんやその家族等においても、「脳脊髄液減少症」の患者団体も各地に多数でき始めました。各種患者団体においてそれぞれ価値観などが異なるかもしれませんが目的は同じはずです。個人的には現在裁判中の方も治療途上の方もおられると思います。いま、再び患者さんやその家族、関係者が結束し、我々の声を医学界行政・国に届ける時がきました。黙っていれば「細部」は見過ごされるかもしれません。
著 NPO法人脳脊髄液減少症患者・家族支援協会
代表 中井 文作成協力(理事 長野 松本)


「提言の続きは 会報12号で」(2008年4月予定)


会報11号をご覧ください
現在 「脳脊髄液減少症」を取り巻く諸々の問題点 また解決の糸口がすべて記載されていると自負します。

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